今日の言の葉 

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12/31  平安前期の歌人に、春道列樹という人がいる。名前を見て「あ、百人
      一首で見た」と気づいた方もおいでだろう。そう、「山がはに風のかけ
      たるしがらみは……」の人だ。古今和歌集にもこんな歌が載せられてい
      る。

       昨日といひ 今日とくらして 明日香川 流れてはやき 月日なりけり

       流れの速い様子を「明日香川」で表している。明日香川はしばしば氾
      濫し、地域住民を困らせた暴れん坊である。このことから、変化が速い
      ことを言うときには、よく引き合いに出される。このように、イメージ
      が固定された場所のことを「歌枕」というのだが、この歌ではこの歌枕
      「明日香川」を言うために、わざわざ「昨日」「今日」を先に表現し、
      「明日」につなげやすくしている。つまり、「昨日、今日、明日香川」
      と洒落ているのだ。このリズム感の良さ。月日の流れの速さを的確に表
      している。

       明日はもう来年だ。行く年来る年を考えるに、これは昨日と明日の積
      み重ねである。
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12/30   宝船に乗った七福神の絵を枕の下に敷くと良い初夢が見られるらし
       い。そこにはこんな歌が書かれているという。

        長き夜の遠の睡りの皆目覚め 波乗舟の音のよきかな
        (ながきよの とおのねぶりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな)

        ううむ。下から読んでも同じだ。回文である。しかし、これには別
       の形があった。

        長き夜の遠乗舟の皆目覚め 波の音振りの音の良きかな
        (ながきよの とおのりぶねの みなめざめ なみのねぶりの おとのよきかな)
        長き夜の遠乗舟の皆目覚め 波の睡りの音の良きかな
        (ながきよの とおのりぶねの みなめざめ なみのねぶりの おとのよきかな)

        少しずつ違うが、どれが本物だろう。甲乙つけがたい。しかし、一
       つ目の「遠の睡り」は、永遠の眠りのようで縁起が良くない気がする。
       初夢見っぱなし。二つ目の「波の音振り」は、寄せては返す波の調べ
       を表すのだろうが、なにかぴんと来ない上に、「音」が二度も使われ
       ているのが残念だ。三つ目のはどこで聞いたものか覚えがないが、船
       端を静かに叩く波音の心地よさが伝わる点で優れていると思う。
        など考えていると、これは文語文だということに行き当たった。な
       らば、「遠の」は、「とおの」ではなく「とほの」ではないか。「遠
       し」は「とほし」なのだ。
        余計なことに気がついた。全部おかしいじゃないか。現代仮名遣い
       でなら認められることなのだろうが。
        「とおのねぶり」なら、「十の睡り」である。七福神なのに。あと
       三人は誰だろう。また眠れなくなった。
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12/29  四十にして惑わず

       もうすぐ43になる自分だが、不惑という言葉には無縁だ。毎日が戸
      惑いの連続。スーパーに買い物に行って出口が分からなくなることすら
      ある。いや、この言葉はそんなことを言っているわけではないのだろう
      が、とにかく惑うのだ。何につけても。
       そんな自分に「おまえはもう四十を越えているのに、なにをしている
      んだ」と突きつけてくるのがこの言葉だ。いや、そんなこと言ったって、
      人間、四十歳にもなれば誰だって惑うものだろう。そういう隠れた常識
      みたいなものが、きっとあるのだ。
       そこへもってきて、その常識を破ったのが、あの孔子だったのだ。若
      くして決断力があったのは、それ以前に十分に学を修めたからであろう
      か。
       もっと勉強しておけば良かった。
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12/28  餅つきはいつ行うものなのだろうか。29日につくのは「9」がつい
      て「苦餅」だから30日だと言ったり、いやいや、29日は「ふく」と
      読んで「福餅」だから29日だと言ったりする。29日、なかなか立場
      がむずかしい。
       縁起が良いの悪いのと諸説紛糾するところ、ボクの信じるのは、「厄
      年」は確かに存在するということだ。
       氷で滑って骨折をしたり、車をぶつけたりと、この一年は確かに厄年
      だった。あと3日と少々だが、家から出ないとかして乗り切りたい。
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12/27  ピーナツが目の前にある。殻がついているものが落花生で、殻をむい
      た段階で南京豆、薄皮までむくとピーナツになると聞いたことがある。
      出世魚みたいだ。同じものなのに。
       気になるのは、南京に行ったら南京豆のことを南京豆と呼ぶのかどう
      かということだ。誰か行ってきてくれないだろうか。このことを調べに。

      ナンキン-まめ 【南京豆】
       マメ科の一年草。南アメリカ原産。江戸前期、中国を経て渡来し、各
      地で栽培される。茎は基部から分枝して地をはい、長さ約40センチメー
      トル。葉は四小葉からなる。夏から秋にかけて、葉腋に黄色の小花をつ
      け、花後、子房の柄が伸びて地中にはいり、繭形の豆果を結ぶ。種子は
      煎って食べるほか、落花生油・菓子材料とする。落花生。ピーナッツ。
      唐人豆(とうじんまめ)。地豆(じまめ)。[季]秋。 (大辞林)


      「唐人豆」という表現が面白い。異国へのあこがれが感じられる。
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12/26  洋行

       外国に行くことをこう言う。ヨーコー。買い物に行っても洋行。留学
      から戻っても洋行である。
       外国がさほど遠くなくなり、気軽にどこへでも行けるようになったの
      で、海外旅行は一大事ではなくなった。昔は総理大臣しか行かないもの
      だと勘違いしていた。文字面からして、長い船旅がイメージできよう。
      空路、その国に降り立つという感じはない。そこには、幕末から活躍し
      た人々の大志が匂ってくる。来る日も来る日も波間を見つめ、日本の国
      の将来を案じ、欧米の文化に習いたいと胸を躍らせる志士たちの若い血
      潮が聞き取れる。
       金融系に勤める親戚が年末に家族でハワイに行くと聞いた時、我が家
      は全員が顔をしかめていたことを覚えている。正月にはご先祖を大事に
      しなくてはいけないのに、何をしているんだ、とのことだったが、そん
      な大胆な計画がうらやましいとかいうのではなく、純粋に罰当たりだと
      思っていたようだ。我が一族は、盆と正月は絶対に寺から離れられない。
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12/25  半信半疑

       クリスマスのことを書かないでいたいと思ったが、庶民派の自分とし
      ては無視はできない。初めてプレゼントをもらった感動を伝えておきた
      い。
       あれは、サンタさんの存在を保育園で初めて聞いた5歳の冬。母に、
      「サンタって、プレゼントをくれるんだって」と仕入れたばかりの知識
      を披露したのだった。しかし、この時はまだ半信半疑で、「うちは寺な
      んだし、仮にサンタが実在したとしても、仏教徒には見向きもしないは
      ずだ」と考えていた。
       ところが朝になってみると、枕許にプレゼントが置いてあるではない
      か。驚きのあまり、起き抜けに母に報告しに行った。母は一緒に喜んで
      くれたが、ややそっけないものだった。昭和41年、母もまだ34歳の
      ころだ。寺の嫁としては、サンタに喜ぶ我が子は、ちょっとまずい存在
      だったのかもしれない。
       そんな配慮があってか、枕許のプレゼントはごく地味なものだった。
      ひよこまんじゅうがひとつ。しかし、ボクはサンタの存在を確信してい
      た。
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12/24  ジクジタルモノガアル

       なんだこれは、と思った言葉である。何とも言えない発語感。じくじ
      くした傷口みたいな粘々したイメージと、しかし何を言っているのか分
      からない謎めいた雰囲気をまき散らしている。

       じくじ 【忸怩】
       自分のおこないについて、心のうちで恥じ入るさま。
       「―たらざることを得ない/渋江抽斎(鴎外)」
                               (「大辞林」)
       おお、鴎外先生も使っているではないか。文豪の手にかかり、いや増
      しに高まる重厚感は、やはり発音によるものか。なにしろ、「じくじた
      らざることをえない」である。濁音の連続に加えて二重否定。
       極めつけは、この言葉の歴史的仮名づかいだ。「ぢくぢ」と書く。粘
      液系という言葉があれば、そこに属することは間違いない。     
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12/23  かくかくしかじか

       こんな言い方をあまり耳にしなくなった。昔はよく使ったものだが。
      使わなくなると「死語」などと言われるものだが、流行語でもないので、
      そんな扱いもされない。ひっそりと消えゆく言葉だ。
       しかし、いかにも歴史のある言い回しではないか。「かく」というの
      は、「斯く」と書く。これで「こう」という意味だ。だから、「かくか
      く」で、「これこれ、このように」ということになる。
       しかし、もう一方の「しかじか」となると、はっきり分からない。し
      かし、ひとつの可能性として、こう考えている。それは、「〜した」の
      古語「しき」の已然形「しか」が二つ重ねられたものだということだ。
      もし、そうだとすると、係り結びの関係から、「こそ」がその文の中に
      あったことになる。つまり、強調構文であるということだ。
       これが正しければ、「かくかくしかじか」とは、「これこれこんなこ
      とがあったんだよ」をごく具体的に、細やかに、驚きを交えて表現した
      ものだということになる。
       この解釈、間違っているだろうか。
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12/22  八宝菜と酢豚の違いが分からない。ところが、分からないことに共感
      してくれる人は少なく、誰に聞いても「全然違う」と言われる。その見
      分け方は大まかに言って、次のようなものだ。

       ・八宝菜は餡がかかっている。
       ・酢豚は豚肉が揚げてある。
       ・八宝菜は酸っぱくない。
       ・酢豚にはパイナップルが入っている。

       分かる人ははっきり分かっているようだ。しかし、こんなことを聞い
      ても、いざ給食でそのようなものが出た日には、「これって、酢豚?」
      とか聞かなくてはならないことに変化はないだろう。何かすっきりした
      答えがほしいものだ。こんな見分けのつけられない自分は嫌いだ。
       しかし、こんな自分にもきちんと見分けられるものがある。それは、
      ブロッコリーとカリフラワーだ。
       しようのないことを書いてしまったが、本当に言いたいのは「八宝」
      のことだ。ボクは小さいころから経を読んで育ったのだが、お経の文句
      にこんなものがあった。
      「きん、ぎん、るーりー、しゃーこー、めーのー、さんごー、こーはく、
       しんじゅー……チーン」
       漢字で書くと、「金・銀・瑠璃・しゃこ・瑪瑙・珊瑚・琥珀・真珠」
      となる。(「しゃこ」はあいにく変換されなかったが、文字がないわけ
      ではない。)
       これで都合、八つの宝がそろったことになる。八宝菜も、「白菜は珊
      瑚、キクラゲは瑪瑙」といった調子で、八つの宝玉になぞらえているの
      だと思う。そう思って食べれば、八宝菜も有り難みが出るというものだ。
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12/21  アニメ「巨人の星」のオープニングで、「思いこんだら試練の道を」
      と歌っているのを「重いコンダラ」だと聞き間違えていた人がいた。グ
      ランドローラーのことを「コンダラ」と言うのだと思っていたのだそう
      だ。放課後のグランドで、「今日はコンダラがいつもより重く感じる」
      とか使っていたそうだ。
       バカだなあと笑いながらも、ボクにも同様の聞き間違いがあった。小
      学生の時に流行った堺正章の歌で、「さらば恋人」というのがそれだ。
      「さよならと書いた手紙」と歌っているのに、ボクには引退レースを走
      る名馬トウカイタテガミの歌に思えたのだ。そんな馬はいなかっただろ
      うが、「さよならトーカイターテガミー」と歌われると、サヨナラレー
      スを終え、鳴りやまぬ拍手を浴びて悠々と競馬場を走る名馬が思い浮か
      ぶ。美しいたてがみをなびかせて。
       たてがみ。漢字で書くと、次のような文字だ。ボクのロマンを打ち砕
      く字面にがっかりである。

       
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12/20  名古屋弁で「うみゃあであかんわ」と言うのを思い出した。「あかん
      わ」ではなく「かんわ」と言えると名古屋感が増大する。
       さて、「うまくてダメだ」と否定的に言うのは、斬新な手法だ。いつ
      発明されたのだろう。ダメだと言いながら、全然ダメでないのだ。言う
      なれば、「うまさを表現したくても表現する方法がなくてダメ」なのだ。
      逆転の発想だ。
       ところで、本来「全然……ない」と否定形で言うべきところを、「全
      然……だ」と肯定表現にまとめて言う言い方も、発明当時は斬新だった
      ことだろう。だれかが始めたちょいと洒落た言い方が、今ではすっかり
      定着してしまった。
       この調子で、「うみゃあでかんわ」の方も定着してもらえないだろう
      か。思っているほどうまくはいくまい。
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12/19  鉄道ファンにはよく知られたことなのかも知れないが、鉄道車両の記
      号は面妖だ。「クハ169−10」とか「ワム80000」とか、なんなのだ、あ
      れは。調べてみた。

       ク:駆動車(制御車)
       モ:モーター車
       ロ:グリーン車
       ハ:普通車
       ワ:有蓋貨車(つまり屋根のある貨車)
       ム:搭載可能な荷重が14〜17tである貨車の事。
              http://usuisummer.hp.infoseek.co.jp/word1.html

       車輌の等級には、かつては、一等車、二等車、三等車があり、それぞ
      れの略号が「イ」、「ロ」、「ハ」だったのだ。やがてここから、一等
      車がなくなり、二等車がグリーン車に、三等車が普通車になり、略号の
      「ロ」と「ハ」が残ったというわけだ。一等車両は三等車両の三倍の料
      金を支払い、専属のクルーまでついていたというから豪華版だったこと
      がよく分かる。なくなったことが実に惜しい。復活の動きはないものか。
       グリーン車にもめったに乗らないのに、口だけは立派だ。
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12/18  コンビニでよく目にする「サンドイッチ」とは、そんな名の伯爵がい
      たことに由来するらしい。あのハワイ諸島も、もともとはサンドイッチ
      諸島と呼ばれた時期もあったというから、サンドイッチ伯爵の威光は大
      したものだ。
       しかしながら、サンドイッチ伯爵その人について知っている人は多く
      ない。食べ物の名前としてしか知られていないのは気の毒だから、調べ
      てみることにした。
       彼のフルネームは、ジョン・モンターギュ・サンドイッチ伯爵。サン
      ドイッチ家の4代目当主だそうだ。
       18世紀半ば、イギリス産業革命前夜、アメリカでは独立をめぐって政
      治戦争が起こっていた。そのころ、イギリスで海軍大臣をしていたのが
      サンドイッチ伯爵である。彼は貴族の立場を守ろうとして、アメリカ独
      立肯定派をあからさまに侮辱し、かえって独立肯定派をあおりたててし
      まったそうだ。海軍大臣としてはさほど功績も残せず、あまり愛された
      存在ではなかったようだ。

       しかも、たいへんな賭博好きだったようで、ついたあだ名が「ひった
      くりジミー」。賭博に熱中するあまり、食事をする時間ももったいない
      ということで考え出されたのが、トーストの間にコールドビーフをはさ
      んだ軽食、サンドイッチだったのだ。
       この「サンドイッチ」に「する」をつけて、「サンドイッチする」と
      か「サンドイッチされている」などと言うが、この言い方はおかしくな
      いだろうか。そもそもが人名なのだ。

       ボクなら、「岸されている」とか、「岸しといてよ」などと勝手に名
      前を使われたりしたら、そっと後ろから近づいて頭をはり倒したくなる。
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12/17  ビフテキ。

       ただのステーキだと思うなよ、これはビーフなんだ、という説得を含
      む言葉だ。相応の圧迫感をにおわせもする。ビフテキ。
       しかし、世の中は進んだのだ。ただ「ステーキ」というだけなら当然
      ビーフだと相場が決まってしまった。だから、ビフテキなんて言うと、
      おしゃれじゃないのだ。当たり前だし、恥ずかしい。その証拠に、大辞
      林を見ると、次のような結果。

      ステーキ [steak]
       厚めに切った肉を焼いた料理。特に、ビーフ-ステーキのこと。

      「特に、ビーフステーキのこと」とはっきり書かれているところに「や
      はりそうか」と感じてしまう。ステーキといえば、ビーフなのだ。
       一方、ビーフじゃないステーキたちは、各々その身分を明かさねばな
      らない。それも控えめに。しかし、豆腐ステーキの位置づけはどうした
      ものか。だいたいあれは肉でもない。豆だ。大豆だ。確かに大豆のこと
      を「畑の肉」と呼び習わすところもあるが、それはあくまでもたとえの
      話であって、本質ではないことを強調しておきたい。豆腐ステーキにも、
      分をわきまえてがんばってほしいと思う。
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12/16  「かがみ」と書いて変換すると、「鏡」と「鑑」が候補にあがってく
      る。ともに金偏。「年鑑」「名鑑」など、何かを調べるのに便利な本に
      は「鑑」が使われ、「顕微鏡」「望遠鏡」「内視鏡」など、光学機器に
      は「鏡」が使われる。内部にあるのは鏡ではなく、レンズだったりする
      が、とにかくそういうものは、「鏡」なのだ。
       さて、よく「鑑みる」とか言ってるが、あれは「鏡を見る」というこ
      とだと最近気づいた。(しかも、そもそも「鏡」は「影見」である。)
      「かがみ+みる=かんがみる」……むずかしそうな言葉だけど、「メモ
      る」とかと大差がなくて、ちょっとホッとした。昔の人も大したことは
      ないような気がした。
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12/15  日本漢字検定協会の「今年の漢字」が発表になった。ボクが11月2日
      に本欄で予想したのとは、ちょっと違った結果となった。実を言うと、
      あの日は「虎」を直感したのだが、ちょっとひねって「星」と書いたの
      だ。果たして、全国の人も「虎」を直感したらしい。以下のような結果
      となった。
      
       順 位 漢字  人気度
       
第1位 「虎」17,709人(20.26%)
       第2位 「戦」 2,540人 (2.91%)
       第3位 「乱」 2,012人 (2.30%)
       第4位 「冷」 1,808人 (2.07%)
       第5位 「選」 1,726人 (1.97%)
       
第6位 「星」 1,709人 (1.96%)
         全応募者数 87,410人

       2位から5位までは世界のことを見ているが、はっきり言って、1位と
      6位を選んだ人は星野タイガースのことしか考えていない。つまりこのボ
      クのことだが。
      (結果をしっかり見たい人は、漢検ホームページへどうぞ)
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12/14  「二の腕」とはどこか、気になった。

       にのうで 【二の腕】
        (1)肩から肘(ひじ)までの間の部分。上膊(じようはく)部。
        (2)肘と手首との間の腕。             (大辞林)

       これでは何も分からない。肘をはさんであっちもこっちも同じ「二の
      腕」じゃ困る。大辞林にはがんばってもらいたい。

       いちのうで【一の腕】
        腕のうち、肩から肘までの部分。
       にのうで 【二の腕】
        (1)腕のうち、肩から肘までの部分。
        (2)腕のうち、肘から手首までの部分。
        現在2の意味で用いられることはほとんどない。
        もと誤用の1が主用。      (三省堂「新明解国語辞典」)

       なんだなんだ。本来「一の腕」と言うべきを、間違えて定着させてし
      まったというのか。明日からボクだけでも、二の腕のことを「一の腕」
      と言ってみようか。きっと変な目で見られるに決まっている。「本当は
      そう言うんだよ」と言ってみても、大勢に影響なし。で、結局ボクもそ
      ちらについてしまうのだ。分かっている勝負に挑みたくない自分がいる。
      「『一生懸命』は本当は『一所懸命』だ」ほどメジャーでもないし。
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12/13  運命は神の考えるものだ。人間は人間らしく働けばそれで結構だ。
                                夏目漱石

       ボクは漱石のことはよく知らないが、運命を意識しないで自分らしく
      生きようとしていたことに共感する。ただ、人間らしく働けば結構なの
      ではなく、ボクは人間らしく楽しんでいきたい。そう思っているからボ
      クは漱石になれないのだ。なりたいとも思っていないが。
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12/12  疑わしいことは問うのを恥じるな。過ちは正されるのを恥じるな。
                                エラスムス

       こう書かれると、エラスムスほどの人でも、人に聞くことが恥ずかし
      かったり、過ちを正すのが恥ずかしかったりしていたことが分かって面
      白い。
       エラスムスって、だれだっけ。
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12/11  お茶といったら「緑茶」である。一番好きなのは、煎茶だ。ほうじ茶
      とか麦茶とか、焦げ臭い茶は好きではない。そう言うと逆のことを言い
      たがる人がいる。緑茶なんて、信じられないそうだ。コンビニでも、茶
      色いお茶に人気があるという。
       不思議なのは、「茶色」という言い方である。ボクの好きなお茶は緑
      色だ。だから、「茶色」と言ったら「緑色」のことだろう。出がらしに
      なってようやくそれらしい色になってくる。焦げたような色の方を茶色
      と呼んだら、茶の主軸はほうじ茶の側に移ってしまうではないか。

       飲用以外の茶の用途を調べると、これが染物に用いられていることが
      分かった。茶汁で木綿、絹布を煮て染めるのだ。こうすると渋いよい茶
      色に染まるらしい。これが「茶色」なのである。茶色とは、染め物の世
      界のことだったのだ。
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12/10  忌詞というと真っ先に思いつくのは結婚式だ。縁起がすべてだから、
      そこでは「去る」や「切る」という言葉は使わない。「終わる」にして
      も、「お開きにする」なのだ。風呂敷だって、結び切りだ。
       神道のおおもと、伊勢神宮の斎宮(さいぐう)では、神に奉仕するた
      めに、「仏」「僧」「経」などの仏教用語や、「死」「血」などの不浄
      な意味の語は避け、「仏」を「中子(なかご)」、「僧」を「髪長(か
      みなが)」、「経」を「染め紙」、「死」を「なほる」、「血」を「あ
      せ」と言い換えている。これは「延喜式」(9/25参照)に定められたこと
      である。時代が生んだ知恵なのだ。
       寺に生まれたものとしては、死を忌み嫌い、僧を認めない文化のあり
      方には抵抗を感じる。宗派により、仏教も差別を助長してきた歴史をも
      つことを知りつつである。
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12/9   正月の三が日は、「ネズミ」のことを「嫁が君」と呼ぶ。地方によっ
      ては、「姉様」「嫁様」などとも。忌詞である。ネズミは「夜目」がき
      くからだと聞いた。
       そんなことを調べているうち、こんな歌に出くわした。

       秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも

       わささとは「早酒」と書いて新酒のこと。「よめ」は「嫁が君」の略
      で、ネズミのことを指すから、「酒かすに漬けた秋ナスをおいしくなる
      まで棚の上に置いておくのはいいが、ネズミに食べられないよう気をつ
      けろ」という意味のようだ。なんとも生活感あふれる和歌で、芸術性は
      ハテナである。これが転じて、「秋茄子は嫁に食わすな」ということわ
      ざができたようだ。
       ……なんということだ。「秋ナスは美味しいものだから、憎い嫁には
      食べさせるな」とか「かわいい嫁に体調を崩すもととなる秋茄子は食べ
      させてはならない」とか、どちらが本当でもおかしくないことで首をひ
      ねってきたが、嫁がかわいいとか憎いとか、そんなことではなかったの
      だ。「ネズミなんかにあげちゃだめ」。これが一番言いたいことだった
      のだ。真実を知らない間はいろいろと考えたものだが、意外な結末。こ
      の歌は「夫木和歌抄」という鎌倉時代の和歌集にあるという。

       なお同様のことわざとして「秋鯖は嫁に食わすな」とか、昔の川柳に
      は「秋茄子はしうと(姑)の留守にばかり食ひ」といったものもある。
       こちらは遠慮なく意地悪だ。
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12/8   梨のことを「ありの実」と言う。スルメも「スル」と言うのが良くな
      いというので、「アタリメ」と呼ばれる。同様に、「すり鉢」も「あた
      り鉢」だ。ギャンブルが生活に染みこんだ形だ。マイナスをプラスにし
      たくてたまらない人々が、縁起を担いで創ったとしか思えない表現だ。
      こういうのを「忌詞(いみことば)」と言う。
       マンガの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」で有名な「亀有」も、も
      ともとは「亀梨」という地名だったらしい。

        亀有の地名の由来は、古く「亀無」または「亀梨」と言われるのは、
       応永5年の「葛西御厨文」や永録2年の「小田原衆所領役帳」によっ
       て明らかですが、「かめなし」が「かめあり」に変わったものと思わ
       れます。
        現在のように「亀有」の文字に一定されたのは、正保元年(1644年)
       幕府の国図作成のときからで、江戸時代には、村の中央に水戸街道が
       通じ、隣接新宿町の問屋街の繁栄と相俟って相応に栄えた農村であり
       ました。       (「警視庁亀有警察署ホームページ」より)
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12/7   生徒が一日の運勢を占うあみだくじを作っていた。当たりはずれの代
      わりに、「大吉」とか「吉」とか書いてあるのだ。ふむふむと見ている
      と、「大吉」「中吉」「小吉」「末吉」「区」……あれれ。これって、
      「凶」のつもりか。これは「区」だ。
       同じような文字だが、横になるだけで迫力のないものになるという実
      感を得た。
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12/6   ボクの父は、何かがおじゃんになりそうな場合、「よし」を使った。
      「凍った道でブレーキ踏んだら、それでよしやわ」といった具合だ。ボ
      クは小学生だったので、この言い方が不思議だった。「そういう場合は、
      『ブレーキ踏んだらおしまい』と言うのだ」と心の中で反発していた。
      だめなことを「よし」と言うなんて、意味が逆なのだ。おかしい、おか
      しいと思っていた。
       ところで、「葦」を何と読むか。これを「よし」と読めたら、大人の
      仲間入りである。通常は、「あし」なのだが、それでは「悪し」になっ
      てしまう。こう考えた人が、マイナスのイメージを嫌って、「良し」と
      いう読み方を与えたのだ。「葭」とも書く。
       思い出すのは、宇治拾遺物語である。この中に、一人の木こりと山守
      が登場する。この二人のやりとりが面白い。

        今は昔、木こりの、山守に斧(よき)を取られて、「わびし、心う
       し」と思て、つら杖うちつきておりける。山守見て、「さるべきこと
       を申せ。とらせん」といひければ、

        あしきだになきはわりなき世中によきをとられて我いかにせん

       とよみたりければ、山守、返しせんと思て、「うゝ、うゝ」とうめき
       けれど、えせざりけり。さて、斧(よき)返しとらせてければ、うれ
       しと思けりとぞ。
        人はたゞ、歌をかまへてよむべしと見えたり。
                  樵夫歌事(きこりうたのこと)[巻三・八]

       そういえば、生家には「よき」が置いてあった。まさかりよりも細身
      でよく切れたので、気に入っていた。風呂をたく薪を割るのによく使っ
      たものだ。
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12/5   ゴイサギという鳥がいる。鳥なのに五位だ。五位以上は内裏での昇殿
      が許されているので、これは偉い人の扱いということか。
       平家物語を見ると、その名の由来が分かる。醍醐天皇が、池にいたこ
      の鳥を見つけ、捕えるように家来に命令したとき、この鳥は、家来が近
      づいても逃げることなく、おとなしくつかまえられたのだそうだ。天皇
      は、勅命にさからわず神妙であるからと、褒美に五位の位を与え、それ
      からは五位のサギ=ゴイサギ(五位鷺)になったというのだ。
       ステーキ肉に称号をつけるのと大差ない話である。
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12/4   英国では騎士となった者には「サー」の称号が与えられる。あのエル
      トン・ジョンも、不気味な演技が受けるアンソニー・ホプキンスも、そ
      れからコナン・ドイルも、名前の前に「サー」をつけて呼ばれる。
       それじゃあ、「サー・ロイン・ステーキ」とは何なのか。
       実は、英国のヘンリー8世が、夕食にステーキを出され、あまりのお
      いしさに「いったいどこの肉か」と聞いたことがあったそうだ。料理人
      は「ロイン(腰肉)」と答え、ヘンリーは「これはただの肉ではない。貴
      族の称号を与えるのにふさわしい」と言って、即座に「サー」という称
      号をを与え、「サー・ロイン」と命名したという。
       ボクは、「サー」の称号はいらないから、細々とでも生きていたい。
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12/3   昨日の「和名類聚抄」を見ていたら、ボクの卒業した小学校の名前が
      出ていてびっくり。「芥見」というのだが、早稲田大学のホームページ
      を見ると「美濃国各務郡」に属している。興味のある人は、次のURL
      をチェックしてほしい。(コピーして使ってもらいたい)
          http://www.littera.waseda.ac.jp/wamyou/doc/Level3/bc010203.html
       岐阜ばかりでなく、全国の地名が集められている。昔の地名が今に残
      されているのを見ると、ちょっとうれしい気持ちになる。
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12/2   大根がおいしい季節だ。しかし、あれは日本の原産なのか。音読みす
      るところがあやしい。調べてみると、歴史は意外に古い。その呼び名を
      列記すると……

      「古事記」−−−−(712)「於朋花(おほね)」
      「日本書紀」−−−(720)「於保爾(おほね)」
      「和名類聚抄」−−(923−930)「大根(だいこん)」

       つまり、昔は「おおね」と呼んでいたのだ。大きい根っこだからだ。
      やがてそれに漢字が当てられ、「大根」と書いたのだ。しかし、きっと
      読み方は相変わらず「おおね」だったのだ。やがて後には「だいこん」
      と呼ぶようになったということか。「はらいた」を「腹痛」、「あたま
      いた」を「頭痛」、「こしいた」を「腰痛」と呼ぶのと同じだ。音読み
      するのは格好がいい。
       どうして「歯痛」は「はいた」なのだろう。
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12/1   期末テストの採点をしていた。一人の生徒が「スポンジ」と答えを書
      いていた。しかし、「ジ」の字がちょっとおかしい。最初の2画を縦に
      書くので、「ヅ」になってしまっている。
       これでは「スポンヅ」だ。どこかの方言のようで、味わいはあるが、
      ボク個人の好みで採点できない苦しさを分かって、しっかり書いてほし
      い。
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     過去文 2003年   2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
         2004年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
         2005年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月