今日の言の葉 

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6/30  どうしてそう読むのか分からないという言葉は多い。子どものころか
     ら不思議だった。その最初は「長谷川」だった。「ハセガワ」と読むと
     知ったときの衝撃は大きかった。その衝撃はクラス中に広がった。「ハ
     セガワ」って読むんやぞ。そしてやがてそれも治まると、知らない人は
     周りにいなくなった。
      そういうことだから、「どうしてハセガワと読むのか」という疑問は表
     に出なくなった。しかし、ボクのようにその不思議さを温めている人は
     全国に数多くいるはずだ。
      高校のころ、つまり25年も前になる。ボクは、古今和歌集にその理
     由を見つけていた。

      人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける

      百人一首にもある紀貫之のこの歌には、詞書き(ことばがき)というも
     のが添えられていた。

     「初瀬(はつせ)にまうづるごとに、やどりける人の家に……」

      ここで「初瀬」という言葉に出会っていたのに、ボクはこれを「ハセ
     デラ」に結びつけようとしなかった。お寺に生まれ、幼いころからおば
     あさんたちの「ご詠歌」で「長谷寺」になじんでいたのに、なんという
     ことであろうか。教科書にも「初瀬=長谷寺(ちょうこくじ)のこと」と
     あったはずだ。今再び、インフォシークで調べてみる。

     はせでら 【長谷寺】
      奈良県桜井市初瀬にある真言宗豊山派の総本山。山号は豊山。天武
      天皇の勅願により道明が草創した本(もと)長谷寺に始まる。のち聖
      武天皇の勅願寺。(中略)ちょうこくじはつせでら。泊瀬寺。初瀬
      。豊山(ぶざん)寺。長谷観音。


      正しくは「ちょうこくじ」。初瀬にあるから「はせでら」なのだ。地名が
     寺の名前になってしまったのだ。でも、まだ何か、引っかかる。
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6/29  どうしておならは恥ずかしいのだろうか。
      音。におい。
      昔の人も恥ずかしかったのだ。だから、「屁」なんて言うと下品に下
     品がおんぶして、いても立ってもいられなかったはずだ。

      屁をこいた 屁をひった 屁が出た 屁っぴり腰 ヘッコキムシ

      どちらかというと、屁は「こく」ものである。お腹にたまったガスを
     ひり出すイメージ。排出する行為。一方、おならはどうか。

      おならが出た おならをした

      考え始めて行き詰まる。「屁」のパワーはそこになく、ゆえにおなら
     は応用が利かない。おならは「出る」ものであって、「出す」ものでは
     ないのだ。「おならをこく」という言葉も、ないとは言えないが、どこ
     か落ち着かない。バランスが悪い。
     「おなら」は、女房言葉だそうだ。昨日の「文字詞」と同じ。「鳴らして
     しまった」という恥ずかしさを包んで「おなら」は優しい響きだ。
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6/28 「しゃもじ」って変な言葉だ。「もじ」だって。この間、「杓子」につ
     いて書きながら、ひょっして「しゃくし」の「しゃ」に「文字」をつけ
     たものかと思ったのだが、これが実は正解らしい。
      同じような形の言葉で、ボクの知っているのは、次のようなものだ。
     
     ・お目もじさせていただきまして、たいへん光栄でございます。
     ・わたくし、あの方にほの字ですの。
     ・かもじが落ちましたよ。

      上から順に、「お目にかかる」「ほれている」「つけ髪(ウィッグ)」という
     意味で、要するに、はっきり言えない恥ずかしさを表した言葉なのだ。
     で、恥ずかしくて全部は言えないので、最初の1〜2文字だけ引き出し
     てごまかしているということだ。
     「○○もじ」という形の言葉は、「文字詞(もじことば)」というらしい。
     そこまでは分かったのだが、一つ分からないのは、「しゃもじ」という
     言葉にどんな恥じらいがあるのかということだ。「杓子」というと恥ず
     かしいので、それじゃあ「しゃもじ」と言っておこう、だなんて、ぴん
     とこない。でも、たぶん恥ずかしいと思ったんだろうなあ。
      昔の人の感覚には理解できないこともあるのだ。
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6/27  野球番組を見ていると「防御率」という言葉が出てくる。
      自責点(これ自体がおおいにオカシイが)を投球回数で割り、9をか
     けた数値がそれである。わかりやすくいうと投手が9イニング投げたと
     き何点取られるかという数値だ。防御率が2.34の投手は一試合完投
     したら平均2.34点とられるということだ。だから防御率が少ないほ
     どいい投手ということだ。
      ううむ。野球通にはこれで良いのだろうが、素人にはなんのことやら。
     だいたい、数値の出し方からして、「防御率」ではないじゃないか。それ
     は、一試合平均の「失点率」とでも呼ぶべきものだ。防御率の高い選手と
     は、防御率の数値の低い数値であるという大いなる矛盾。
      「防御率」とは、「防御できなかった率」であるというのがボクの結論だ。

      野球シーズンになって、好きな番組が見られなくなったので、野球に
     対する不満がまたたまってきている。       
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6/26 「お前、酒癖いいじゃない」

      そば屋でふと耳に入ってきた言葉。話していたのは大学生か新入社員
     かという年齢の男性4人。聞いた瞬間には、「あまり聞かない言葉だし、
     『癖』というのは良いものじゃない」と反論したくなったが、なかなか
     良いコミュニケーションを作っている様子。
      そういう言い回しもいいものだと思ってしまった。

      酒癖が悪い   あいつは一癖ある奴だ
      手癖がわるい  この車は癖がある   ○○のくせに 

      そうなのだ。「癖」という言葉は、いつもこんな風に使われるのだ。
     おまけに「やまいだれ」の字で、つまり病気であることを表す。良い病
     気というものがないように、良い癖というものもないはずだ。ところが
     この若者たちの言葉には、「癖」に対する理解があった。
      こうして言葉は意味を変えていくのかと、しみじみ思った。悪くない
     と思った。
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6/25  カタカナ言葉が批判されるのは、その意味の分かりにくさにあるよう
     だが、漢字で書かれていても分からないものは分からない。読める言葉
     でも意味は不明なものがある。

     「批准」……………「ひじゅん」。だれかしたことがある?
     「台風」……………「熱帯低気圧」とどう違うの?
     「熱帯低気圧」……「温帯低気圧」とどう違うの?

      しかし、一番困るのは、「意味の発明」である。ボクは以前、これで
     大変な目にあったことがある。
      ボクはソバ好きだが、あるとき、通りがかった店の品書きに「野武士
     ソバ」と書かれているのに出会った。にしんソバとか天麩羅ソバとか、
     ソバのバリエーションは数々あれど、野武士というほど野趣あふれたソ
     バは聞いたことがない。即決である。小躍りする心を抑えて渋めの声で
     「野武士ソバ一つ」と注文をした。
      ソバが来た。湯気がモウモウと立ち上って運ばれてくる。そしてゴト
     リとテーブルに置かれたソバを見たボクは卒倒しそうになった。ソバが
     見えないほど器一面に、シイタケがまるで野武士の陣笠のように並べら
     れているではないか。野武士ソバとはよく言ったものだ。しかし、ボク
     は何が嫌いかと言ってシイタケほど嫌いなものはない。さりとて、自ら
     注文してしまったものに文句のつけようもない。あり余るシイタケには
     一つも手をつけず、シイタケ臭さに閉口しながらソバだけは残さず平ら
     げた。
      憮然として会計を済ますボクの背後に、食べた器をいぶかしげに片づ
     ける店員の気配があった。ボクは正体の分からないものを注文した自分
     をなじるとともに、自分勝手に名前を付けた店主の洒落っ気をうらんだ
     次第だ。
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6/25  こんな時間になって「松井ジェット就航」のニュースが入ってきた。
 0:15  「松井ジェットは明日、就航され……」と言っていた。
      自動詞でも受身形があると書いたけれど、これはひどいと思った。
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6/24  いつだったか、家族で旅行をした折りに、総合福祉施設に宿泊したこ
     とがある。温泉施設付きでバリアフリー。お年寄りや身体に障害を持っ
     た人たちと同宿である。泊まった部屋は車椅子での利用を考えて作られ
     ており、快適であった。部屋のドアも、病院の診察室みたいにつり下げ
     式で、床のカーペットにはレールすらない。洗面所の鏡は手前に傾いて
     設置してあり、これは車椅子に座った姿勢で見やすくする工夫である。

      ただ、この施設の玄関を入ってすぐのフロントには「フロント」とい
     う表示はなく、幅80センチほどの白いプラスチックの板に35センチ
     四方ほどの大きな文字で「受付」と看板が下げられていた。あまりの大
     きさに驚いてしまったが、すぐに気がついた。ここは若者ばかりでなく、
     すべての人を受け入れるために、一番弱い立場の人に基準を取った設計
     がなされているのだと。

      昨日のコラムを書きながら、言葉が万人のものでなくなっていく現象
     に思いをいたした次第である。
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6/23  ゴミステーション

      公共職業安定所は「ハローワーク」で、農業協同組合は「JA」 で、
     カタカナ言葉の進出は激しいが、ゴミ置き場もいよいよ「ステーション」
     である。日本語の貪欲なパワーを感じるところだ。カタカナ言葉の氾濫
     は自国の問題として真剣に論議してほしいところだが、こんな便利で粋
     なものがそうそう廃れるはずがない。数ある言葉の中でも、手軽に意味
     が分かり、新しい感覚を提供してくれるという点で、カタカナ言葉は抜
     きんでた力を持っている。
      1.「ゴミ捨て場」 
      2.「ゴミ置き場」
      3.「ゴミ集積場」
      4.「ゴミステーション」
      どれが一番清潔に感じるであろうか。意味合いも少しずつ違うが、そ
     れ以外に伝わるものがあることにお気づきだろうか。言葉は意味以外に
     語感を提供するものなのだ。「公共職業安定所」という言葉に「職業と
     は不安定なものだ」と感じた人には、「ハローワーク」は明るいイメー
     ジが感じ取れて、しっくりくるであろう。「農業協同組合」に物々しい
     組織感を感じる人や「うちは農家じゃないから」と貯金を銀行に持って
     行こうとする人には、「JA」は新しいブランドみたいなものだ。
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6/22 「先に行かれて悲しかった。」

      これを英語で言うとどうなるか。"go - went - gone"だから、「先に行
     かれる」というのは、「I was gone 」だろうか。もしそうだったら、「父
     に死なれた」は、「I was died by my father.」になってしまう。父に
     殺されるようなイメージの文だ。けれど、「die 」は自動詞だから、そん
     な風に使えるわけがない。そういうところを見ると、英語は不便だと思
     う。日本語では自動詞にだって受身形が存在するのだ。
      
     「突然あんなところで出てこられて、びっくりしたんじゃないの?」
     「でも、私、あそこで泣かれてやっとわかったの。」
     「大事に思われて、A子も幸せ者よね。」

      以上、いろいろな受身形である。
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6/21  ファミリーレストランは、手軽に中流気分が味わえる場所だ。注文に
     応えて店員が「かしこまりました」と言ってくれるところが良い。この
     間は、カレーハウスでも言ってくれた。「チキンの野菜巻きカレー」な
     んて注文なのに申し訳ない。とか思いつつ、次は、「モツ煮カレーです
     ね、かしこまりました」と言わせてみたい自分がいる。
      ところで、口では「かしこまりました」と言っているのに、少しもそ
     ういう様子ではない店員に出会うことがある。アルバイトなのだろうが、
     感動のない声で、注文を受ける計算機みたいな機械を見ながら言うのだ。
     せめて一度くらいはこちらを見てほしい。
      そもそも、「かしこまる」とは、「畏まる」で、おそれることを言う。
     ただしこれは、怖くて恐れるのではなく、相手が偉大なために、敬意を
     払っておそれるのである。
      だから、「恐れ入ります」と言っても、もとは同じ意味だと思うが、
     「かしこまりました」とは使い方が少々違う。

     a:「君、これはほんの気持ちだが、とっておいてくれ。」
     b:「恐れ入ります。」

     a:「君、これはほんの気持ちだが、とっておいてくれ。」
     b:「かしこまりました。」

      やってみなくてもいいじゃないかという声が聞こえてくるようだ。
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6/20  本欄6/15に書いた「っ」についてだが、思いきって書いてみよう
     と思う。というのも、「『十本』は、『じっぽん』と読むのが正しい」
     とか教えても、理解してもらえないことに軽いいらだちを感じるからだ。
     現場では、そんなことをゆっくり教えていられる時間がない。
      結論から言うと、その言葉に「っ」が入るかどうかは、含まれる文字
     の読み(古語で)に「ふ」が入るかどうかによって決まるようだ。

     「十」……じふ+に  → じう+に  → じゅうに  「十二」
          じふ+ほん → じっ+ぽん → じっぽん  「十本」
     「法」……はふ+りつ → はう+りつ → ほうりつ  「法律」
          はふ+ひ  → はっ+ぴ  → はっぴ   「法被」
          はふ+と  → はっ+と  → はっと   「法度」
     「立」……こん+りふ → こんりう  → こんりゅう 「建立」
          りふ+はう → りっ+ほう → りっぽう  「立法」
     
      この方式で考えれば、「たふとい」が「とうとい」とも「たっとい」
     とも読めることが理解できるはずだ。年を取るとこういうことも分かっ
     てくる。かつては「建立」の読みなんて、なぞだった。どうして学校は
     おかしなことばかり教えるのかと、不満に思ったものだ。勝手なもので、
     今は、教えることの面倒の方を不満に思い始めている。      
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6/19  「気持ちよさげに」とテレビが言う。そういえば、「なんだかよさげ」
     とか、「自信なさげ」とか、あちこちですでに使われている。侵蝕率は
     「なにげに」に迫る勢い。もともとこんな言葉ではなかったはずだ。

      悲しげなまなざし  何か言いたげな顔  
      恐ろしげな口ぶり  楽しげな声

      こんな使い方である。「ナントカ+げ」という形は、平家物語にも見
     える由緒ある言葉だ。「扇の的」で、那須与一は、波間に漂う船上の的
     に向かい、一発必中を神に祈るが、目を開けたとき、風は勢いを落とし、
     波も穏やかになり、与一には「扇も射よげにぞなつたりける」と見えた
     のだった。ここで「射よげ」とは、「射よと言いたげな様子」だと思う
     が、「射やすくなっていた」とか意訳が載せられている。
      そういうわけで、なんにでも「げ」をつければ良いというものではな
     い。「悲しい」「したい」など、気持ちを表す言葉のおしまいの「い」
     の代わりに「げ」をつけてみれば、きっと正しい使い方になるはずであ
     る。
      岐阜の子は語尾に「げ」をつけるが、「あいつ、悲しげやげ」と使う
     のが正しい。
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6/18  「あの子は先生とタメグチで話すんですよ。」と同僚の言葉。同僚に
     もいろいろあるが、特段若くなくても「タメグチ」は使う言葉だ。若者
     言葉を嫌うわけではないが、使いたくない言葉の一つにこれがある。ほ
     かには、「ダチ公」とか、……あ、これは若者も使わなくなった言葉か。
      もともと「タメ」というのは、「同学年」をいうものだ。初めて会っ
     た人と話がはずんで、互いのことを確かめて、「なんだ、タメだったん
     かあ」となる。同級生に話すようになれなれしく話すから、タメグチ。
     何か汚いんだなあ、その言葉。きっと、「愚痴」みたいな響きがいけな
     いんだ、と思っていたら、出てくる出てくる……。

      かげ口  憎まれ口  賢しら口(さかしらぐち) 
      告げ口  減らず口  謗り口(そしりぐち)  

      こりゃ、良くない言葉ばかり。イメージが良くないわけだ。「ナント
     カグチ」というのに、良い言葉はない。ところが、
           
      ウチナーグチ(沖縄言葉)

      こちらにはホッとする。ハイサイ、ハイサイ。
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6/17  ボクの生まれた家では、杓子(しゃくし)のことを「かーじゃくし」と
     いう。味噌汁をよそうとき使う、金属製のあれである。発音は、「かい
     じゃくし」と「かーじゃくし」の中間で、ドイツ語的な読み方をするの
     が正しいようだ。そんなところからも、そこが名古屋圏にあることを感
     じさせるが、この言葉は、我が家ばかりではなく、村の共通語だった。
      だから、村の中に葬式があったりすると、あちこちの奥方が集まって
     取り持ちを行って、「ちょっと、かーじゃくし、どこいってまった?」「ど
     こぇいった? かーじゃくしは」「あー、ここにあったー、かーじゃくし」
     と、うるさいことこの上なかった。
      さて、そんなポピュラーな言葉なのに、街から転校してきた子に言っ
     ても伝わらない。そこで、なんというのかと聞くと、当たり前のように
     「しゃくし」というではないか。「かーじゃくし」の方が正しい、省略
     してそんな風に言うのは良くないと言っても、「横浜じゃあ『しゃくし』
     じゃん」と言われた。こうして、自分たちの話す言葉が田舎の言葉だっ
     たと初めて認識した次第だ。
      さて、母はこの言葉の由来をこう語った。
      古くは岐阜でも「しゃくし」が当たり前だった。ところが戦争が始ま
     ると、鍋でも釜でも、金属製品は次々と供出されていった。お寺の鐘ま
     で出ていって、帰ってこなかった。そんな時代だから、しゃくしも持っ
     て行かれて鉄砲の弾になった。でも、そういうものがないと困るので、
     知恵を絞って、大きな貝に穴を開け、木の柄につけて、しゃくしにした
     のだ。だから、これを「貝杓子」と言うようになった。戦争が終わって、
     貝なんて使わなくなったのに、言葉だけは残ったんだよ。
      ボクは村のおばあさんたちのことを思った。夫を戦争に取られるは、
     家の中の物がどんどん出ていくはで、不安で仕方なかっただろう。そし
     て結局は、戦争には負ける、物はない、帰ってくるはずの夫や息子が帰
     らなかった家もたくさんある。ボクは、お盆には村中のたくさんの家を
     回ってお経をよんで育ったので知っているが、仏壇に「忠孝○○居士」
     とか「義烈○○居士」とか、先の尖った金色の位牌が祀ってあるのは、
     あれは出征して亡くなった人のものだ。村のおばあさんたちは、そんな
     位牌に毎日ご飯と味噌汁をお供えする。
      その時使う道具は、いつまでたっても、「かーじゃくし」でなくては
     ならないだろう。
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6/16  ファミリーレストラン行くと「おタバコはお吸いになりますか」と聞
     かれる。こういうところでショックを受けてしまうのは、おかしいだろ
     うか。「お吸いになりますか」って、そりゃそうだろうと思うけれど、
     もっときれいな日本語がなかったかと思う。

      1.「タバコは吸われますか」
      2.「タバコは召し上がりますか」
      3.「タバコはお召し上がりでしょうか」

      ほらほら、ちゃんとスマートな言葉があった。このほかに、タバコは
     「飲む」というのがあったが、ファミレスにはそぐわない言葉だろう。
     「喫煙席と禁煙席、どちらをご希望でしょうか」というのもあった。ボ
     クは迷わず、「禁煙席をお願いします」と言うのだ。言いながら、「ど
     うもおかしい、何か変だ」と思っている。吸わないのが当たり前なのに、
     「お願い」しないとタバコを吸わされるという、そういう仕組みが納得
     できないのである。
      ボクは「禁煙席」というものの存在そのものが納得できないのだ。バ
     スや電車のシルバーシートみたいだ。そこ以外は、タバコ無法地帯。吸
     いたくないタバコを吸わされても、「そんなところにいるお前が悪いん
     だ。吸いたくなければ、禁煙席にいきな」と冷たい扱いを受けている気
     分だ。
      逆に、「喫煙席」というのも気になる。ここでならタバコ、吸いたい
     放題という様子。吸わなきゃ損だと思っているのかと思うほど。それに、
     高速道路の「ETC専用」のレーンみたいだ。あれは本当に必要なのか
     と思ってしまう。ときどきやってくるETCの車のために、ほかのレー
     ンまで混雑している現状。
      ボクの好きなラーメン屋は、全席禁煙で、しかも土足厳禁。あくまで
     清潔感を大切にした店である。店主は麺を足で踏んで作っている。
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6/15  漢字の訓読みに「っ」は似合わない。

     ・たっとい → 尊い(貴い) ・たっとぶ → 尊ぶ(貴ぶ)

      「とうとい」という読みがあるのに、「たっとい」だと。どうしてか
     と生徒に質問されたので、その仕組みを説明したが、「?」という反応
     だった。またいつか本欄で説明するとしよう。
      また、「pa」の音は不自然な感じがする。間の抜けた発音だ。なにか
     変だ。

     ・おもんぱかる → 慮る

      本当に日本語なのかと思う。しかし、「pa」も「っ」も含んだ言葉が
     あった。

     ・もっぱら → 専ら     ・あっぱれ → 天晴れ
      
      こういうことだから、「やはり」は「やっぱり」にしないほうがいい
     と思うのだ。「やっぱし」は論外である。  
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6/14  文法の授業というのはつまらないもので、覚えることばかりが雑多に
     ある。おまけに中学では「動名詞」「不定詞」なんて英文法も混じってく
     るので、この混乱は尽きない。「名詞」とか「形容詞」とか答えるべき
     ところに「関係代名詞」などと書かれて英語の勢力の強さを感じたもの
     だ。今でも中学英語はそういうことを教えているのだろうか。
      さて、国語の話である。あるとき、「副詞」の説明が試験に出された。

     ・「副詞は、文中では(  )語として働く」

      正解は「修飾(語)」だったが、Sという子は、「もっぱら修飾語」と書
     いてきた。ふむふむ。採点の迷い所である。確かに、副詞は他の文の成
     分にはならないで、専ら(もっぱら)修飾語として働く。
      しかし、よくないことに、S子さんは、辺りの子たちに「ねえねえ、
     『もっぱら修飾語』って、なにぃ?」と大きな声で尋ねて回っていたの
     で、彼女がこの言葉を理解せずに使っていたことがばれてしまった。彼
     女には、教科書にある「もっぱら」の意味が分からなかったのだ。そし
     て、辞書を頼ろうとせず、ただ覚えただけだったのだ。こういうのを理
     解とはいわない。
      ただ、Sさんの立場からすると、日常的に使われない言葉で説明され
     ることほど辛いものはないはずだ。
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6/13  元号について調べてみた。昨日書いた「大化」は元号の生まれ初めの
     もので、日本の元号第一号であった。以来、数多くの元号が生まれたわ
     けだが、当初はいい加減なところもあって、

      645年 6月19日 大化元年(孝徳天皇)……「大化」は5年間
      650年 2月15日 白雉元年(孝徳天皇)……「白雉」は5年間
      655年     斉明天皇元号を定めず

     ということで、せっかく孝徳天皇が定めた元号というものも、次の世代
     には引き継がれなかった。また、天武天皇は、672年に即位しているよう
     だが、14年間は元号を定めず、686年7月に初めて「朱鳥」と定め、翌年
     にはしかし持統天皇の御代。またも元号は定められず消え去っている。
      以来、元号が決められてもほんの3、4年から6、7年で変えられて
     しまうことになる。これは実にあわただしく、物覚えの悪いボクのよう
     なものにはとても追いつかないことである。
      こういうところからも、昔の人は記憶力が良かったとか考えられそう
     なものだが、ボクはあまりそうは思わない。昔も今も、物覚えのよくな
     い人は数々いたはずである。しかし、これがたいした問題にならなかっ
     たのは、歴史が万民のものではなく、一部のものだったからだと思うの
     だ。
      人々の暮らしに50年前という昔はなく、いつでも、今生きることで精
     一杯だった。過去とは10年そこそこまでで、それ以上の昔は、寺社や為
     政者、一部の豪農の記録するものではなかっただろうか。歴史とは庶民
     の関心事ではなかったかも知れない。そんな時代には、30年前の元号が
     なんであろうがどうでもいいことだ。
      ボクは昭和の時代に生まれたが、これが63年もあって良かった。父親
     と同じ元号なために、年齢を比べるのに不便がない。
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6/12  岐阜の街には歴史のある店舗がいくつもある。その中に「創業百五十
     年」とか「創業天保元年」などの表記が目立つことに気がついた。今さ
     らだが。
      古いことが良いことではないのだが、これは古さ自慢である。伝統あ
     る店であることを強調し、時代の荒波を数々越えてきた、本当に実力の
     ある店であると主張しているのだ。
      ただし、「創業百五十年」と書いてしまうと、明くる年には「百五十
     一年」に書き直さなくちゃ気持ちが悪いことだろう。それに、ずぼらな
     店主だったら三十年ぐらいそのままだろう。人事ながらそんな心配が胸
     をよぎる。だから、「天保元年」などと書いておけば何年たってもそう
     いう心配はないけれど、西暦が中心の世の中になると、いったいどのく
     らい古いのか、さっぱり分からなくなる。
      そんな心配をよそに、大学病院前付近には、そんな老舗がいっぱい。
 
      ボクにとって、イメージできるのは、

       「昭和20年=1945年」「大化の改新=645年」

     のふたつだけである。
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6/11  昨日のコラムの続きみたいになるが、「保線区」という言葉は不思議だ。
      鉄道用語にはなじみのないものが多いが、「五所川原機関区」などの
     表現は、どの場所を管轄しているか、ということがはっきりしている。
     
      機関区……大宮機関区・岩見沢第一機関区
      電車区……仙台電車区・新前橋電車区・幕張電車区
      運転区……片上運転区・横川運転区・上沼垂運転区

      このほかに「区」というものがどれだけあるのか分からないが、それぞ
     れに頑張って働いてくれている。そしてここでは、「区」は、「どの場所か」
     を表している。だから、「板橋区」などと同じイメージ。ところが、「保線
     区」という言葉はどの場所なのかを表していない。会社の「部」「課」み
     たいなものか。
      鉄道用語では、「区」という言葉の使い方が世間並みではないことが想
     像できた。もっと詳しく知りたい。知っている人、情報ください。
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6/10  病院の看板を見ていると、おなじみの「内科」「外科」などに混じって、
     「放射線科」というのを見かける。初めて見たときには違和感があった。
      「内科」「胃腸科」「耳鼻咽喉科」「歯科」などは、体のどの部分を診るのか
     がはっきり書かれているのに、「放射線科」って、いったい何を診るとい
     うのだ。わけが分からない。
      不思議に思ったまま成年を迎えたが、大きくなって分かったことは、
     「放射線科」は、「こちらでレントゲンを撮ります」だということで、これ
     がわかってもどうも釈然としない。

      しばらくして、さらに、「リハビリテーション科」なるものに出くわし
     たが、あのときほどの違和感がない。気持ちがそんな表現になじもうと
     しているのだ。大人になるというのはこういうことなのだろうか。
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6/9   朝の会や帰りの会で、一年生の教室から元気な歌声が聞こえてくる。
     思わずこちらも口ずさんでしまう。

      果てなく 広がる空へ  
      飛び立とう どこまでも 遠く高く
      心の翼で  力の限り  
      輝く朝に  出会えるまで……

      歌いながら、「おや?」と思うのは、「果てなく」でいいのに、どう
     して「果てなく」なのかということ。うっかり子どもたちに聞いたり
     すると、日本語を知らないと言われそうだ。大人のくせに。でも、なん
     だろう、「し」というのは。無意味に入ってくる言葉。
      考えていると、「おりしも」という言葉が浮かんだ。「折り」「し」「も」
     である。「ちょうどその時」という意味の言葉だ。「し」の字は、ターミ
     ネーターのシュワルツェネガーのあの名台詞、「I'll just be back.」の
     「just」みたいな存在かと思う。言葉の意味を軽く強調しているのだ。
      そんなことを思っていたら、次々と似たような言葉が出てきた。

      「必ずしも」「今しも」「だれしも」「まだしも」「ころしも」「さしも」

      現代語から古語まで、ずるずると拾い出してみた。たった一文字なの
     だが、あなどれない「し」である。
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6/8   ずっと以前(2/15)に本欄で話題にした「老麺棲」だが、このほど、大
     垣の店に心躍る看板を発見した。そこには「老麺楼」と楷書で書かれて
     いた。気になっていた新店舗の「棲」は「楼」の誤植であることがよう
     やくはっきりしたことになる。
      これで「ラーメンが棲んでいる家」とかいう無理な解釈をせずにのび
     のびとラーメンを食べることができる。このチェーン店を展開する本社
     は、岐阜市内にあるが、隷書などで格好をつけようとしないこと、隷書
     にしたかったら、まず辞書をきちんと引くようにと言いたい。

      もちろん「言いたい」ということと「言う」ということは別物である。
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6/7   仕事に行き詰まると、ボクは片づけがしたくなる。言うほどきれいな
     机でないのが恐縮だが、一旦始めるとやめられなくなることはだれにも
     経験のあるところだろう。
      こういうとき、「今、片づけモード」とか使ってみる。
     ……うむ、似合わないことを確認したところだが、この「モード」の使
     われ初めが気になった。そもそも、「モード」とは何か。
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     モード 1 [mode]
     (1)(ファッションの)流行。
       「秋の―」「―雑誌」「ニュー-―」
     (2)様式。形式。方法。
     (3)〔音〕 旋法。調。音階。
     (4)〔数〕 資料で、最もしばしば表れる数値。度数の最も多い数値・階
       級値。最頻値。並数(なみすう)。   (インフォシーク辞書から)
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      分からない分からないと思ってきた言葉だが、調べてみて、もっと分
     からなくなった。意味合い、ばらばらである。だが、「ナントカモード」
     というとき、(2)の使い方であることは想像がついた。
      しかし、ここまで一般化するには、やはりそれなりの原動力が必要だ。
     ボクはマンガ雑誌の影響力を考えたのだが、どうだろう。週間少年誌に
     「幽波紋(スタンド)」というものが出たのは今からもう15年も前のことで
     ある。そのころではなかったか、ひそかにこの言葉が力を得ていったの
     は。
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6/6   ミミズにオシッコをかけると、腫(は)れるよ。(某社の古いCMから)

      そんなこと、TVで言われるよりもずっと前に、ボクたちは試してい
     た。いつかクラスでこのことを告白すると、オレもオレもと経験者が名
     乗りを挙げてきたので驚いたことがある。ああいうものは、オシッコを
     かけたくなるものなのだろう。小学生のころのことだと付け加えておき
     たい。
      さて、ミミズにかけているオシッコをさかのぼって毒素が駆け上がっ
     てくると思うと、より強力なオシッコで対抗したくなったという話も友
     達の共感を得た。また、そんな実験の最後にオシッコが弱まってくると
     きには、ミミズから照準をはずし、毒素が体内に逆流するのを防いだと
     いうのも、なるほど、うなずける話だ。
      妙な話になったが、ボクの不思議は、「おしっこ」という言葉が変換
     されると「オシッコ」になることにある。漢字にはならないのだ。子ど
     ものころ、オシッコのことを「小便」と呼ぶと知ったときの衝撃は忘れ
     られない。そんなたいそうなものだったのか、という思い。別にそんな
     仰々しい呼び名をつけてもらわなくてもいいです、と思ったものだ。い
     や、そしてまたこれを「小用」とも言うとなれば、何かごまかされてい
     るぞと気づこうというものだ。恥じらいの文化というものを感じる次第
     である。
      意味がはっきりしていながらその言葉を漢字にできないというのは、
     これが民俗的なものであることを示している。

      わけの分からないことを書いて今日は逃げておこう。
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6/5  「ずっとロムってました」

      おおお、高性能のATOK16、一発変換。変換できてしまうのは、ATOKの
     コンセプトに基づいたものだと、以前ジャストシステムから説明があっ
     たが、「ロムって」の形以外の結果を示したい。

      ×村内………………「ろむらない」
      ×無理マス…………「ろむります」
      ロム留………………「ろむる」
      ロム留とき…………「ろむるとき」
      ×群れ場……………「ろむれば」
      ×群れ………………「ろむれ」
      ×室生………………「ろむろう」
      ×ムッ田……………「ろむった」
      ロムって……………「ろむって」

      「ろ」を変換すると「×」になるとは知らなかった。ボクのPCだけだ
     ろうか。自分で設定して忘れることもあるのであてにしてほしくないが、
     それはともかく、ほかの候補がまったく出てこない。正しく変換できた
     のは「ロムって」の場合だけだ。基本となる「ロムる」でさえ出てこな
     い。これはこの言葉の扱いの軽さを意味する。いや、「ロムってました」
     の形以外で使うことなんてないのだ。
      そういう意味では、かつて日本中で流行した「タブらん」に似ている。
     この言葉は「そんなことタブらん」と使ったものだ。プロ野球西武ライ
     オンズの田淵選手のランニングホームランはあり得ない話だというので、
     人をバカにして作られた言葉だが、ぼくがこれを使わなかったのは、こ
     の言葉が差別的な意図を含んだものだったからだけでなく、あまりにも
     活用が効かなかったことも原因の一つである。
      語源から考えれば分かることだが、すべて否定の形ばかりで、「タブ
     らん、タブらん」と使われて、「タブる」とかいう形が存在できなかっ
     たのだ。流行語には不完全なものがよくあり、一般化されるのはなかな
     かむずかしいものだ。
      あ、そうそう。「ロム(ROM)」とは「Read Only Memory」の略で、読
     み込みだけが可能なメモリーのことを言う。転じて、読んでばかりで書
     き込みをしないことをインターネットの世界では「ロム」というように
     なったとさ。
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6/4   一昨日のコラムで「市民権」と書いた瞬間、なんだこりゃ、と思った。
     「なになにが市民権を得た」と言うとき、それは「よく知られている」
     「名が売れている」という意味になる。しかし、どうして「市民権」な
     のか。そもそも、ボクたちには「市民権」というものがあるのかどうか
     も怪しい。インフォシーク辞書にすがろうか。
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     しみん-けん 2 【市民権】
        (1)〔citizenship〕国民、あるいは市民として思想・行動・財産
          の自由が保障され、また国政に参加する権利。
        (2)(アメリカ合衆国などで)国籍。州籍。
          「アメリカに移住して―を取る」
        (3)(特殊だったものが)広く世に行われて一般化すること。
          「この言葉はもう―を得た」
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      なんだか不安になってきた。果たしてボクたちは、(1)の意味でこの言
     葉を使ったことがあるだろうか。(2)の方が(1)よりもずっとよく知られ
     ている。そう、「日本で市民権を得た」なんて、あまり聞かない。それ
     はアメリカの話題のはず。でも、日本にいても(1)はきっとあるのだ。そ
     して、(1)なんて知らないままに、(3)を物知り顔に使っている。
      みなさんが(1)を知っていたら、申し訳ない。ボクは知らなくても42歳
     を迎えている。
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6/3   「A君は、なかなかいい目をしている。」

      ときどき耳にする言葉だが、こういうときの「○○をしている」とは、
     何をすることなのだろうか。いや、結論は見えている。何をするわけで
     もない、ただ、持っていること、そういう状態にあることを言うのだ。
      だから、
     「青い目をしたお人形は、アメリカ生まれのセルロイド」
     「かわいい顔してあの子、わりとやるもんだねと」
     「いいガタイしている」
     「立派なナリした男性」
     などと使う。
      いやいや、何もしないのに「している」なんて、いい加減なものだと
     思うが、こういういい加減さが美しいのだと思う。日本語のことをほめ
     ているのかけなしているのか、よく分からないだろうが、書いている本
     人は、大いに魅力を感じていると言っておこう。
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6/2   掲示板にこんな書き込み。良いセンスをしていると思う。
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      普段使ってる言葉の中に『引く』っていうのがあるのですが、この言
     葉っていつ頃うまれたものなのか最近気になりました。
     「##のやることはやりすぎで引く」
     「そのセリフはクサ過ぎて引く」
      『寒い』に使い方は似てますが、『寒い』より傷付く気が・・・。
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      いわゆる「業界用語」から来ていると直感が働いた。テレビ局内で使
     われている言葉には、こうしたものが多い。「押してる」とか「巻きで」
     とかいう類だ。ただ、それにも由来があって、この言葉は、潮が引くイ
     メージを借りていると思うのだ。カメラには「寄り」と「引き」がある
     ので、そちらからかとも思うけれど、夜店でよく見る露天商などが、客
     が離れていくようすを潮が引いていくことにたとえたのではなかろうか。
     そして、そういう言葉遣いを業界がまねた、とか。
      まだ調べていないのに、勝手なことを書いた。しかし、こういう使い
     方はまだ市民権を得ておらず、辞書には載っていなかった。言葉が新し
     い意味を得ていく地層の中にボクたちは生きている。
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6/1   プライベート。どういう言葉だろうか。
      以前、「コンビニエンス・ストア」について、これは「コンビニエン
     ・ストア」と言うべきだと書いたことがあるが、「プライベート」と
     いう言葉も落ち着かないと思う。
      というのも、この言葉の意味が、以下のとおりだからだ。
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      ━━ a. 私の, 個人(的)の; 私用[有]の; 内密の, 非公開の, 親
      展の; 民間の, 私立[私営]の; 官職を持たない, 平民の; 人目につ
      かない, 隠遁した.
      ━━ n. 兵(卒).              (EXCEED英和辞典)
     ----------------------------------------------------------------
     「a」とあるのは形容詞だということだ。「n」は名詞。だから、「私
     のプライベートに口を出さないでください。」とかいうのは、個人的な何
     に口を出さないでほしいのか分からない。「プライベート・タイム」だ
     とか、そういうものだと思うのだが、その部分は省略されてしまってい
     る。形容詞ならば、その後に名詞が来ないと気になってしかたがない。

      よしやこれが名詞だとしたならば、「私の兵卒に口を出さないでくだ
     さい。」といっているようなものだ。「プライベート・ライアン」という
     映画があったことを思い出した。あれは「二等兵」という意味だった。
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     過去文 2003年   2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
         2004年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
         2005年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月