今日の言の葉 

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3/31   「ゑ」の発音がどうのと書いたところで、今度は「ゐ」が気になった。
      ボクの日本語変換システムはジャストシステムのATOK16で、口語の変換
      にもものすごく高い能力を発揮してくれるのだが、「よいこ」を変換す
      ると、「よゐこ」が候補に挙がってくる。こりゃまたどういうことだ。
      芸名じゃないか。ジャストシステムは芸能界に迎合しているのだろうか。
       そもそも「良き子」の「き」が「い」に変化してしまった(イ音便と
      いうよね)のが「よい子」なのだ。「き」が「ゐ」に変わるか?
       日本語変換システムは、なんというか、もっと確かなものであってほ
      しいと思う。明確な回答を得たいものである。
       ちなみに、ボクのコンピュータには、MS-IME2002も入っているのだが、
      こちらで試すとそんなことはなかった。「よい子」の形も存在しない。
      一見さびしい結果だが、単語での変換という点では、こちらが正解であ
      る。
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3/30   ボクはローマ字入力が苦手で、今どきひらがな入力なのだが、「ゑ」
      と「ゐ」の入力には手こずる。ローマ字入力だと「we」「wi」と入れれば
      「ゑ」「ゐ」になるので、その時だけはローマ字入力に変えている。古典
      の入力にはローマ字が最適とは、ものすごい皮肉だと思う。いやしかし、
      こんなふうに入力するのは、「ゑ」を「ウェ」と読むことの証拠だ。
       さて、昨日は「右衛門」を「ウェモン」と読んだかもしれないと思い
      ながら書いたのだが、しばらくして、思いつきでいいかげんなことを書
      いてしまったと後悔が襲ってきた。そこで、確かなところを調べたくな
      り、青山学院大学のホームページにたどり着いたところ、

      「いつものことくさゑもむのやとへそ付せ給ひける。さゑもんは、めつ
       らしく久しきなとはおろかにて」 
       (http://www.agulin.aoyama.ac.jp/img/misag16.html)

      とかあるではないか。なんでもこれは「みぞち物語」なのだそうだが、
      「さゑもむ」「さゑもん」とあるのは「左右衛門」のことであろう。ほら
      ほら、ボクの勘は当たっていた。「右衛門」は「ウェモン」であった。
       こうなると、ドラえもんのことも、これからは「ドラゑもん」と書き、
      「ドラうぇもん」と発音せねばならないと思う。
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3/29   一休さんのマンガが大好きだった。「絵の中のトラを追い出して下さ
      い」と頼んだところなど、膝を叩いて「やるねっ」とか思ったものだっ
      た。
       その脇役に、シンエモンさんという人がいた。おさよちゃんが倒れた
      とき、「相当ショックだったんだろう」とつぶやいて、子ども心にも、
      「室町時代にそんな言葉があるわけない」と時代考証の甘さを思ったも
      のだが、彼の名前が気になる。姓はニナガワ。これは蜷川と見当がつく。
      問題は下の名前の方だ。
       シンエモンは「進右衛門」とか書いたのだろうが、「右衛門」をどう
      発音したものか。「右」は「ウ」。それなら、「シンウェモン」じゃな
      いか。日本語にない発音。これが「シンエモン」だったら、「右」の字
      がかわいそうだ。せっかくそこに書かれているのに無視されている。
       それに、学割とかの申請でふりがなをふるとき、「右」の字はどうす
      るんだろう。若い頃から悩まされて大きくなる気がする。気が弱くて、
      小さく「ぅ」とか書いたりして。
       こういう形の名前を持った人が現代にも何人かいらっしゃると思うが、
      ぜひ免許証を見せていただきたい。
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3/28   いつの間にか定着してしまった「目線」という言葉(今も一発で変換
      されてしまって、驚いているところ)だが、出始めは「へんてこな言葉
      だなあ。視線と言えよ」と思ったものだった。しかし、ほとんど抵抗も
      ないままに、すっかり定位置を占めてしまったように思う。それどころ
      か、「視線って何だ?」とか思われている気がする。そういえば、「カ
      メラ目線」とは言っても「カメラ視線」とは言わない。しかし、「視線
      を感じる」と「目線を感じる」のどちらが使われ、どちらが正しいであ
      ろうか。
       いや、つまり「目線」は、単に目の向いている方向といったほどの意
      味であり、「視線」にはそれ以上に注視する思いが働いていると見るべ
      きであろうか。このように、使い分けがされれば、定着するのも無理は
      ない。
       はやり始めのころには「子どもの目の高さで」とか、そういう言葉が
      使われていた。「子どもの目線で」というのも、このころの言葉だった。
      こんなに一般化するとは思わなかった。流行語、あなどるべからず。
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3/27   「皆さんのご期待にそぐうように」という発言を耳にした。職場での
      ことなので、ちょっとびっくりしたのだが、聞いた瞬間の思いは二つ。
      一つには「そぐわない」という言葉から否定の気持ちを除いたものなの
      だということ、二つには「そぐう」なんて言葉は聞いたことがないぞと
      いうこと。
       そういうわけで、インフォシーク辞書を引いてみた。
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         そぐ・う そぐふ   (動ワ五[ハ四])

         似合う。つりあう。多く否定の形で用いる。
         →そぐわない
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      ふむふむ、つまりこういうことか。

       そぐわない そぐいます そぐう そぐうとき そぐえば そぐおう

       何とも言えない違和感。いや、たしかに昔はそういう言い方をしてい
      たかもしれない。そもそもがそういう言葉だったのかも。でもね、今の
      社会でそんな言葉を使っている人はないのだよ。微妙な運命にさらされ
      ている言葉。ボクは「そぐわない」という言葉はいまや形容詞じゃない
      かと思うのだが、どうなのだろうか。そんなことよりも、「期待にそぐ
      う」じゃなくて、「期待に応える」「期待に沿った」なのじゃないかと
      思う。
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3/26   野球用語はどうなっているんだ。横文字ばかりで好きになれないとこ
      ろを我慢して覚えたのに、最近では「ドロップ」なんてさっぱり聞かな
      くなったじゃないか。
      「落ちるカーブ、あるいは、縦のカーブといいます」
       面倒な話になっている。そういうことなら、フォークとかは、「突然
      落ちるカーブ」とか言ったらどうだ。
      「反対のカーブ」………………(シュート)
      「それていくカーブ」…………(スライダー)
      「ふらふらするカーブ」………(ナックル)
       ちゃんと分かるじゃないか。野球解説者は、言葉についての新たな方
      針を野球連盟に提案すべきだ。
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3/25   野球が好きになれない。
       子どものころから納得できないと思っていた。だいたい、好きなドラ
      マが野球に乗っ取られるシステムがおかしい。社会人なんだから、きっ
      ちり時間通りに終わるべきだ。しかも、ルールが整備されていないじゃ
      ないか。三振はアウトだろう。そんな当然なことが、キャッチャーが取
      りこぼしたときには走っても良いとは何事だ。「振り逃げ」という呼び
      名は正々堂々たるべきスポーツに暗い影を落としている。しかも、「盗
      塁王」まである。なんということか。ずるいことをして表彰されるなん
      て、聞いたことがない。脱税と同じじゃないか。それに、「インフィー
      ルドフライ」なんて、どこからがセーフかまるで判然としない。それを
      ボールが空中にある間に決めなければならないなんて、審判は命がけだ。
      バットが回ったとか、回らないとか、そんな高速カメラみたいなこと、
      人間にゃ無理だ。
       こんなに野球を牽制するにはわけがある。最近まで「オープン戦」を
      「開幕試合」のことだと思っていたからだ。いつまでも開幕試合やって
      いると思ったら、ありゃ、練習試合じゃないか。
       いつだったか、定食屋で野球の中継を見ていたら、スタンドの男性の
      声が放送席まで聞こえてきたことがある。

      「おおっ、なんやこの試合。変わっとる。みんな、ユニフォームがばら
      ばらやないか。どうやって試合するんや?」

       オールスターの中継であった。ボクは古い友人にあった気分になった。

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3/24   以前、車を走らせているときにくだらないことを思いついて、「野菜
      炒めを注文したら、いたんだ野菜が出てきた。野菜イタメ」とか話して
      いたところ、本当に偶然だが、そんなときに、目の前にさびれた定食屋
      が見えてきた。看板を見ると「当たり屋」とある。おいおい、そんな名
      前を付けるか。物を食べさせる店だぞ。
       「こんないいお店に来るなんて、あなた、それは大当たりだよ」という
      メッセージなのだろうが、的はずれだ。どうみても食中毒を出しました
      という名前になってしまっている。大変遺憾なことに店はさびれついで
      に、つぶれていた。名は体をあらわしたのであろうか。
       で、昨日も遠出をしたが、なんとまあ、「ハゲみりん」という看板を
      目撃してしまった。どういうことなのか、さっぱり分からないが、何度
      見直してみても「ハゲみりん」だった。全国区の商品ではなく、その町
      のオリジナルブランドと思われる。謎である。しかし、その名の由来を
      尋ねる勇気も持ち合わせなかった。海沿いの、小さな港町だった。
       そうそう、野菜がいたんだときには、漢字は「傷んだ」と使う。そう
      いうことが実は言いたかった。心が痛む。
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3/23   「おもわく」は「思惑」って書くけれど、これって当て字じゃないの
      か。「いわく」「のぞむらく」の仲間に「思わく」がある気がするのだ。
      「だれだれが思わくは、○○がどうのこうの……」とか使っている間に、
      次第に使い方が変化してきたように思えてならない。だから、「思うに
      は」という意味で使って良いと思うのだ。
       「当たり前」だって、「当然」の書き間違いの「当前」から生まれた
      と聞いたことがある。だから、「思わく」が正しいのに、これに漢字を
      当てて、「思惑」を作ったと考えたって、おかしくはないのだ。
       問題は、こういうことを考えながら、ちょっとも確かめようとしない
      ボクの性格にある。だれか、教えてくれないだろうか。
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3/22   昨日の続きを。
 
       現代仮名遣いには「ぬかずく」「なかんずく」「ひざまずく」「つまずく」
      など、納得のできないものがいくつもある。それぞれについて考えてみ
      たい。これらを漢字で書くと


      「ぬかずく」 「なかんずく」 「ひざまずく」
「つまずく」
         ↓      ↓       ↓     ↓
       「額ずく」  「就中」
    「跪く」  「躓く」
 
      である。額(ぬか=ひたい)を地面につけるから、「ぬか+づく」であ
      りるのだし、たくさんある中でも特にこれに注目したい、とたくさんの
      「中」について述べようとするから、「なかんづく」であるのだし、ひ
      ざをつくから、「ひざまづく」なのだし、つま先、コーンだから、「つ
      まづく」であるのに。現代仮名遣いはどうも理解できない。変だ。
       そのくせ、「ほおずえ」なんてのは「ほお+つえ」だから認められな
      い、と突っぱねるところがかわいくない。
       「頭突き」なんて、昔からあったのだろうか。あったとしたら、どう
      書いたのだろう。「づつき」じゃないのか。興味がある。
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3/21   ボクのコンピュータは、「つまづく」と書いて変換しようとすると、
      「『つまずく』が本則」と指導をしてくれる。どちらで変換しても「躓
      く」と正しく漢字にしてくれるところが優しい。いや、優しすぎはしな
      いか。もっと厳しくて良いと思うのだが。
       変換しようとすると「『つまずく』に直してからなら変換してやるけ
      ど、これじゃねえ」とか言ってもらえると、胸が痛む分だけ学習効果が
      上がるかもしれない。でも、「もう3回目じゃないの、同じ間違い。何
      やってんの」とか言われると、すっかりしょげてしまうかも。
       で、10回目ぐらいになると、「ひょっとして、本当は『つまづく』
      の方が歴史的に正しいってこと、ご存知なんですか?」と低姿勢になっ
      たりしてくれると、気分が良いかもしれない。
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3/20   ヒゲがジョリジョリする。毎日剃っているのに、毎日生える。非常に
      面倒だ。特にほほの右下、唇の脇の部分の伸び率が高い。問題は、この
      ヒゲを何と書くか、である。
       漢字で「ヒゲ」は三種類ある。岩波国語辞典によれば、「『髭』は口ひ
      げで、『鬚』はあごひげ、『髯』はほおひげのこと」とある。だいたい
      が「ほほ」なのか「ほお」なのか、はっきりしてほしいところだが、生
      えている場所によって漢字が変わるというのは迷惑ながら面白い。面白
      いのは良いが、ボクのこの口元のヒゲは、「髭」であり「鬚」であり「髯」で
      あるようなのだ。これは困る。いや、困っちゃいないが屁理屈をこねた
      くなるじゃないか。
       顔の上に区分図を書きたいと思った次第である。理科室の人形を想像
      してしまった。
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3/19   昨年夏に台湾に行ったとき、下町に「全家便利商店」という店を発見
      した。緑と白とブルーの横縞は、まさしくファミリーマート。台湾では
      ファミリーは「全家」なのか。「便利商店」は要するにコンビニという
      ことなのだろう。強引な訳し方であるが、漢字のパワーを感じる。
       ところで、コンビニが登場した当初から持っていた不満がある。「コ
      ンビニエンス・ストア」というネーミングである。そもそも、コンビニ
      エンスという言葉は、「便利」である。「便利な」は「コンビニエント」
      であるから、コンビニのことは、「コンビニエント・ストア」と言わな
      ければおかしいじゃないか。そう思ってからもう20年以上が過ぎた。だ
      れも直さないうちに無駄な年月が過ぎた思いだ。
       ボクの学校には、「そういうことをクリエイティブしなければなりま
      せん」と平気で言っている人がいるが、外国語が日本語に取り込まれる
      ときは、相当の注意を払わないといけないと思う次第である。

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3/18   昨日、「メーる」には反対しないと書いたが、もし定着したらどうし
      よう、と心配になった。まず、活用を与えなければならない。何活用か。
      「メーらない」「メーります」「メーる」「メーれば」「メーろう」
       こうしてみると、五段活用らしい。すると、受身や尊敬の形は「メー
      られた」なのだ。「校長先生がメーられたのは、昨日の何時ですか」と
      使う。さらに、「飛んだ」「買った」「書いた」のように、音便を認め
      ねばならない。一番ぴったりくるのは「メーった」の形だ。「昨日は思
      わずメーちゃった」と使いたい。(これが「促音便」であることはいう
      までもない。)
       書いていて、どんどん広がる安心感。この言葉は絶対に定着しない。
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3/17   「サボる」という言葉がある。この言葉を小さいころから平気で使っ
      ていたのは、大人が使っていたからだ。だから、平仮名で書くものとば
      かり思っていたのだが、なぜか「サボる」という書き方。
       これが「サボタージュ」という言葉(フランス語?)から生まれたも
      のだと聞いても、いつまでも変な感じがしていた。そんなこと、してい
      いのか。外来語だぞ、外来語。日本語に混ぜるなよ、と言いたかった。
       こうしてみると、「メモる」なんて一発で変換できてしまうワープロ
      ソフトはえらいと思う。「外来語+る」の表現の手軽さ。
       最近、携帯電話の「メーる?」というのぼりをよく見るが、面白い使
      い方だと思う。そういうのは嫌いだし、反対派の人たちの言いそうなこ
      とも予想できるのだが、あまり定着しそうにない言葉なのであわてて反
      対したりしないことにしている。
       反対したい人は、まず昔に戻って「牛耳る」あたりから攻めてみると
      良いだろう。正しくは「牛耳を執る」であるが、「牛耳る」は辞書にも
      載っているし、一発変換される言葉だ。こういう言葉を放っておいて、
      新しい言葉ばかり攻めるのは卑怯というものだ。
       僕は、「牛耳る」とは使わないし、イヤらしい略し方だと思っている
      ので、批判する権利があるのだ。      
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3/16   臭い臭い

       なんと読むか。
      「くさいくさい」「くさいにおい」……? どちらとも読める。
       なにかだまされている気がする。同じようなことは中学校一年の時、
      英語の時間にもあった。「dream a dream 」で、夢を見るという意味だ
      と教えられた。はじめの「dream 」が「夢を見る」という動詞で、後の
      が「夢」という名詞なんだそうだ。一つの言葉が二つの意味を持ってい
      る。詐欺にあった気分だったし、アメリカ人は不便じゃないかと思った。
      死に際に「Dream ……」とか言葉を残したら、「夢……」なのか「夢を
      見ろ……」なのか、分からないじゃないか。
       話は「臭い」のことに戻る。もう10年も前になってしまうが、僕のク
      ラスで、給食の福神漬けが臭かったことがある。気づいても僕は黙って
      いたのだが、気づいてしまったS田という女の子が隣の子に、「ねえね
      え、これ臭ってみて。うんこの臭いがするで」と言ったことがある。福
      神漬けがそんな臭いだったこともショックだったが、僕にとっては「に
      おってみて」という言葉遣いがショックだった。言われた相手も「ほん
      とや、うんこ臭い」と平気で言っていた。取り残された気分。
      「におう」は自動詞であって、「臭いをかぐ」という他動詞ではない。
      こういう使い方は便利で面白いが、定着するのだろうか。そうなってし
      まうと、「嗅ぐ」の方がどこかに消えてしまう。「嗅覚」なんて、「に
      おう感覚なのよ」と理解されてしまう。いやだいやだ。
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3/15   骨折をしてギプスをして、もうかれこれ6週間である。こんなに長い
      こと脚をぐるぐる巻きにしていて、イヤにならないかと思うだろうが、
      もうこりごりである。先日、医者に診てもらったところ、今日はギプス
      をはずそうかと言い出した。ちょっと飛び上がったが、前の医者の経験
      があるので、即座に喜ばないことにした。しばらく聞いていると、「半分
      だけ取ります」とのこと。上下に切って半分を残すのかと思ったら、な
      んと、前後に切られて後ろ半分が残った。ギプス千秋楽も近い。来週は
      その半分も取り去られるらしい。
       ところで、そんなことになってしまうと、今や僕の脚型になってしま
      っているギプス後半をしっかりと包帯で固定しておかねばならなくなっ
      た。大量の包帯を使うので、以前より大変になった。巻いたり解いたり。
       その包帯に「日本薬局方」とあるのが気になった。「方」とはどうい
      うことだ。「法」ではないのか。「救急法」「療法」「作法」「手法」
      と、みんな「法」だ。唯一「処方」があるが、例外かも。辞書を引いて
      もどうしてそうなのかが分からない。 
       こういうことの分かる人! 教えて下さい。      
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3/14   以前この欄に「あなた」とは「あっち」のことだと書いた。書きなが
      ら、なにかおかしいと思っていたのだが、何が変かというと、誰かに面
      と向かって「あちらさん」などと言うのはおかしいということだ。人と
      人とが向き合った場合は、「そちらさん(なた)」であっても、「あちらさ
      ん(なた)」ではないはずだ。
       するとこれは、もともと、直接に相手のことを呼ぶ言葉ではなかった
      のではないかと思えてくる。誰かと人のことを噂しながら、「あの人は
      ○○で……」と言っているときには「なた」は使える。また、手紙で
      尊敬の気持ちを込めて「あっちの方の尊いお方」と使うのもいいじゃな
      いか。使われる方としては、ちょっといい気分かもしれない。
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3/13   今日は公立高等学校一般選抜の日。無事に受検が終了することを祈っ
      ている。ところで、この受検の一斉指導の日に集合に遅れた学級があっ
      た。担任の先生は「すみません、確信犯で遅れます」と言っていたのだ
      が、「うん?」と思った。確信犯とは、どんな意味なのだろうか。岩波
      国語辞典にないので、インフォシークの国語辞典で調べてみた。
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      かくしん-はん 【確信犯】
       道徳的・宗教的・政治的な信念に基づき、自らの行為を正しいと信じ
       てなされる犯罪。思想犯・政治犯・国事犯など。
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       これが分かった段階で、例の言葉の意味がまた不明になった。「遅れ
      ることは悪いとわかっているけれど遅れます。ごめんなさい」という使
      い方だったら、これは間違い。「悪いと思わないよ。いま学級でやって
      いることの方が大切なんだからね」と使っていたとしたら、これは正解。
      でもなあ……。間違っている人の方が人間的。
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3/12   漢字のつくりについて、面白いことを発見した。「隻」と「双」の字
      だ。「隻」は、「隻手(片手)」というように、「一つ。片一方」という
      意味で、舟の数を数える意味はどうやら後から生まれたもののようだ。
      中国では発音が重視される。たぶん舟の数え方をを「セキ」とか言った
      のだろう。そこに「隻」の字を当てたのかもしれない。一方、「双」は
      「ふたつ」とか「並ぶ」という意味。なるほど、この字は「又(手の形)」
      が二つあって、手に手をとってという感じがする。なんて思っていたの
      だが、今日、漢和辞典を眺めていて、ふと「双は俗字による」と書いて
      あったので、びっくりした。本字は「雙」だという。変な文字。まてよ、
      この字は「隻」に似ている。
       辞書によれば、「隻」は手に鳥を一羽持っているさま、「雙」は手に
      鳥を二羽持っているところだと書いてある。なあんだ、そうだったのか。
      持っている鳥の数がそのまま文字の意味になった。しかし、そんなので
      いいの?しかも、この鳥は、「つがいの鳥」なのだそうだ。そんなこと
      知るかと思う。つがいだという証拠でもあるのか。
       しかし、これまで「一隻」と書いてあっても「いっそう」なんて読ん
      でいた自分を振り返った。ばかだったと思う。
       しかも、舟を数える「いっそう」は「一艘」と書く。涙が出そうだ。
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3/11   今日は卒業式。今は午前1時ちょっとすぎ。外に出たら、星の多さに
      びっくりした。そしてやたらに瞬いているので、中学のころに勉強した
      ことを思い出した。「星がキラキラと瞬いて見えるのは、温度差のある
      空気が揺れるせいだ」と。なつかしい。いや、中学のころは、そんなこ
      とを聞いても空気が揺れている感じなんてしなかった。星はただそこに
      あったし、それとは無関係に、空気はまた空気でちゃんと存在していた。
      二つのものは別物で、互いに関係のないものだった。
       それがこの年になって、ちゃんとつながって感じられた。二つが同時
      に体の中に入ってくる感じ。遠い国々の歴史が、あるときふっと足元に
      来て理解されるように、自然に体に入ってくる。
       年を取るのはいいことだと思う。それは、衰えを表さない。それは、
      累加する神経系だ。
       このごろになって、立場を変えた見方が好きになってきた。真実は表
      面に出たがらないものだ。
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3/10   桃の花の咲く里で、風花の舞うのを見た。いよいよ春だという感動が
      体をめぐる。
       風花という言葉は、だれが考えたのだろう。美しい日本語。イメージ
      のふくらむ世界。英語ではどう呼ぶのだろう。「Wind Flower」……そん
      なわけないか。そもそも、名付け方にそういう発想があるのかどうか。
       と見るうちに、霰(あられ)に変わった。地面を軽やかにはねて、やが
      て消えていく。そういえば、霰は「降る」ものだが、風花は「舞う」も
      のだ。花は舞うもの……。僕はこの国に生まれたことに誇りを感じてい
      る。
       まずは「……っていうかあ」というクセを直したい。(うそです。そ
      んなクセはありません。)
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3/9    今日は曇りで始まった。晴れという予報を信じたい。
       その「曇」という字だが、子どものころ、そんな字を見て驚いた覚え
      がある。「くもばっかりの日だから、曇りだ」と思ってどきどきした。
      古文書を解読するような気分。
       そしてこのごろは、いろいろな字の「生まれ方」に興味がある。この
      字を発明した人は、どんな気持ちで作ったのだろうか。ひょっとすると、
      「日が雲の上にあるようす」と思って作ったかもしれない。「曇り」と
      は、そういう日のことをいうのではなく、そういう状態のことを言うの
      だから。
       38年ぶりにいいことを考えた。(年数はいいかげんです)
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3/8    カール・ブッセの詩に「山のあなたの空遠く……」というのがある。
      山にあなたが住んでいるのかと思ったら、「山の向こうの遠い遠いあっ
      ちの空のずっといったところに」という意味だったのでビックリした。
      昔の人は変な日本語を使ったものだ。
       しかし、「あなた」という言葉は、そういう意味なのだろう。「あっ
      ち」が「あなた」なのだから、「そっち」は「そなた」なのだ。
      そういうことだから、時代劇などで役者さんが「そなたはどう思うか」
      などとやっているのは、「そっちは……」と言っているわけで、これは
      まるで中学生の口げんかと同じである。「そっちが○○だと言うけど、
      こっちは××なんだから!」という言い方みたいだ。
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3/7    喫茶店で書いている。コーヒーを注文すると、それから湯を沸かすよ
      うな店。やる気はあまりないようだ。ところで、メニューを見ると、こ
      んなようす。

       ハンバーグ定食……800円  焼き肉定食…………800円
       海老フライ定食……800円  野菜炒め定食………750円
       焼そば………………500円  ピラフ………………500円
       カレー………………500円  スパゲッティ………550円
       玉子丼………………500円  親子丼………………550円
       玉子サンド…………450円  ハムサンド…………500円
       トースト……………350円  コーヒー……………350円

       まず、これでは「喫茶店」と言えないのではないかという疑問が湧い
      てくる。いくつもの定食や丼類に押されて、最低価格を守っているコー
      ヒーはけなげにさえ見える。実はこのほかにおいしそうなものがずいぶ
      んと並んでいるのだ。おかしい。何か、良くない力が働いているようだ。
       しばらく前にうどん屋に行ったら、「食後のコーヒーは150円」と
      書いてあった。こういうことがあると、コーヒーを飲みにうどん屋に行
      きたくなるではないか。
      「羊頭をかけて狗肉を売る」という話がしたかったのだが、なにかおか
      しなことになった気がする。
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3/6    卒業式には「河口」を歌うと以前書いた。ものすごく魅力のある歌で、
      叙情的だ。こんな歌を歌って卒業できる子どもたちは幸せだと、毎日、
      教室から届く厚みのある声を聞いて思う。
       ところで、歌詞の中に「筑後平野の百万の生活の幸」という部分があ
      ることが気になった。「筑紫平野」はあるが、「筑後平野」というのは
      地名として存在しない。これは作詞をした丸山豊さんの間違いだろうか。
      それともほかに理由のあることなのだろうか。
       僕の結論はこうだ。
      「つくし平野」と「ちくご平野」のどちらがエネルギッシュかというこ
      とだ。濁音にはエネルギーがこもる。丸山さんは筑後平野なるものが存
      在していないことを知りながら、あえてこの語を用いたに違いない。
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3/5    昔、日産の車には、濁音が多かった。セドリック、グロリア、ブルー
      バード……。チェリーやパルサーあたりは軽かったのだが。
       逆にトヨタでは「C」の発音で始まる名前が入り乱れていた。クラウ
      ン、カリーナ、コロナ、カローラ……。ところが今では、どちらも軽く
      なった。車の名前を思い浮かべてみてほしい。時代は、軽薄の傾向にあ
      と言われたものだが、まだまだそんな方向なのだろうか。
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3/4    だれにでも、「口癖」というのがあるだろう。ボクは人の口癖が面白
      くて、子どものころから気をつけて観察していた。今も、ボクの隣に座
      っている同僚の「何いっとんの」に笑いをこらえているところだ。
       ところで、ボクには「ハイオク満タン」という口癖がある。ガソリン
      スタンドに行くと、無条件で「ハイオク満タン」なのだ。こういうのも
      場面を限定した口癖だと思う。
       先日、別の同僚を乗せてガソリンスタンドに行ったのだが、ボクは意
      識もせずに「ハイオク満タン」と言っていたらしい。「岸さん、気前が
      いいですね」というので、何言ってんだと思ったのだが、言われてすぐ
      にこの車が車検の代車だったことに気がついた。気づいたものの、店員
      はすでにガソリンをゴンゴンと入れている。と見る間にほかの客の応対
      に。
      「どうして言ってくれなかったの?」
      「いえ、そういうのが岸さんのポリシーなのかと思って……」
       口は災いの元というが、口癖だってバカにならない。イヤなことを思
      い出した。
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3/3    道の脇にはさまざまな看板が出ているもので、あの手この手で通行者
      の目を引こうとしている。見逃せないものがいくつもあるが、もうずい
      ぶん前に、鳥羽水族館のあたりでこんな看板を見た。
 
      「らつか性男」
 
       最初は「らっこ」の誤植かパロディと思った。水族館を意識している
      な、しかし、実は「落花生」を折り込みつつ、主張の強い広告にしてい
      るのだ。なるほど、同じ目指すのなら、落花生みたいにちゃんと殻で武
      装した、しかも軽さのある男性だ。そのコンセプトには賛成だ。論理に
      強くしかも深刻でない、そんな生き方がしたいと共感するところだ。
       こんな田舎にこんな洒落た広告を載せるなんて、もったいないし、看
      板があんまり古くさく、一部さびてもいたので、「昔も天才がいたんだ」
      と感心させられた。しかしながら、いったい何の宣伝かが気になった。
      「らつか性男」?
       もうお気づきだろうか。ボクは古くさい「男性かつら」の看板に感動
      していたのだ。今どき右から書かれた看板を残しておくなと言いたい。
       鳥羽にはこのほかに、「誤楽の殿堂」と書かれたパチンコ屋の看板が
      あったりと、油断のならない土地柄である。
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3/2    最近、掲示板に書き込みがあった。2/20の本欄を読んだ方のもの
      だが、
      「このごろ自分のことを、ものすごく懐疑的になったと思う(先生の日
      記?言葉より引用)って・・先生!変わってないと思うよぉ! 15年前
      だってそうだったよぉ!」
      ということだ。15年前といえば27歳当時。中三の子どもたちと暮らして
      いたころだ。
       そのころから懐疑的だったということだ。しかし、そんなことがあっ
      たであろうか。信じがたいことだ。そんなに疑い深かったであろうか。
      いや、今だって、自分でいうほど懐疑的ではないはずだ。信じられない。
      ボクはそんなに懐疑的な人間であろうか。信じられない。
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3/1    花粉の季節なので、のど飴市場は花盛りである。コンビニにも薬店に
      も、のど飴の新作が続々登場。ボクが今、気に入っているのは「鼻トー
      ル」というもの。鼻が通るメントールということなのだろうか、その名
      にふさわしい強烈な効き目。名前はどうかと思うが。
       以前、「毛玉トレール」という毛玉取りがあったが、フランス語みた
      いな響きが却って田舎っぽかった。「スベラーヌ」というのは家具が滑
      らないように接地面につける滑り止めだった。どれもみごとに購買意欲
      をそぐネーミングである。
       商品名にべたなしゃれを持ち込むのは日本だけなのだろうか。外国の
      資料がほしいところだ。  
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